帰りや髭面(ひげづら)~側には寄らぬ~
昭和の海をうたう
父の顔 覚える前に 船出する 帰りや髭面 側には寄らぬ
父の顔(かお)覚(おぼ)える前に船出(ふなで)する帰(かえ)りや髭面(ひげづら)側(そば)には寄(よ)らぬ


遠洋漁業の漁師さんは、
一旦漁に出ると、
数ヶ月は家には戻ってきません。
ハワイ沖などで漁をして帰ってきた磨さんは、
こんがり小麦色に日焼けして、
髪も髭も伸び放題。
まだ幼い私たちは、
数ヶ月前に見送った時とは違う父の姿に、
なんか見たことあるような、
ないような。。。と
すぐには近寄らず、
遠くから様子を伺うのでした。
以前、母から聞いた話ですが、
私がまだ幼い頃、
父が帰ってきて
玄関に荷物を置いたり、
色々やっている姿をみて、
台所にいた母に、
「なんか、おんちゃんきたよ」と言っていたそうで。。。
玄関を見に行った母は、
「あら~なんだべ、お父さんだっちゃ~」と
私に呆れていました。
父の気持ちを思うと、
なんとも切ない思いです。
そんな当時の心情を、
磨さんは短歌に詠みました。